キーパーソンインタビュー

地域全体を図書館に見立て、本を読むように
荒浜の暮らしや文化を知ってもらいたい。
海辺の図書館
館長 庄子 隆弘さん(写真右)
専属カメラマン 佐藤 豊さん(写真左)

仙台市若林区荒浜にある「海辺の図書館」をご存知だろうか。図書館といえど、本を読むのではなく、訪れた人たちが、震災前の荒浜の生活や文化などについて語り合うことを目的としている。荒浜で生まれ育ち、海辺の図書館を立ち上げた庄子さんと、図書館の専属カメラマンの佐藤さんに、設立時の考えや震災の経験、荒浜に対する思いなどをうかがった。

STORY 01

震災後に生まれた
荒浜の新たな交流拠点。

かつては約800世帯2200人が暮らしていた仙台市若林区荒浜。青松白砂の海岸が南北に延び、爽やかな潮風が渡っていく集落だった。この地域で生まれ育った庄子さんは、大学卒業後、司書の資格を取得。震災当時は泉区にある図書館で仕事をしていた。
「夕方ころ自宅に戻ろうとしましたが、津波のため荒浜には帰れませんでした。その日は家族の安否を確かめるため、近所の避難所を必死で探して回りましたね」と庄子さん。一時的に避難していた利府の親戚の家で翌日、家族と無事に合流することができた。

「海辺の図書館」の誕生

震災の年の12月、荒浜は災害危険区域に指定された。庄子さんは仮設住宅で暮らしながら、日々の仕事や自宅の片付けなどに多忙を極めていたという。そんな中でも、もともと家があったところを訪れ、波の音を聞きながらぼんやり過ごしたり、気ままに本を読むこともあった。
「自宅の跡地に来ていたときに、ちょうど近くにいた地元の人と話をすることがあったんです。その人は、『昔の荒浜はこんなところだったんだよね』と自分の知らない荒浜を色々教えてくれました。私はそうして話を聞いているうちに、まるで本を読んで何かを知るような感じがしたし、荒浜の歴史や風土を知ることで、心が豊かになる感じがしたんです」と庄子さん。
震災によって失われた荒浜の暮らしや魅力を取り戻すような経験だったという。その経験を通じて、庄子さんはまち全体を図書館に、地域の自然や人などを本に見立て、訪れた人に荒浜の暮らしや文化に触れてもらう考えが浮かんだ。そして2014年、自宅跡地に「海辺の図書館」を立ち上げた。

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荒浜の海から約200メートルの場所にある海辺の図書館

第2の人生は「海辺の図書館」カメラマン

庄子さんと同じく荒浜出身の佐藤さん。若いころは遠洋マグロ船や貨物船の船乗りだった。船乗りをやめてからは、牛乳配達の仕事をしたり、食料品店に勤めたりしており、プライベートでは、趣味の写真に熱中する毎日を送っていたという。
そんな中、震災が発生し、荒浜のまちは津波によってほぼ壊滅状態に。佐藤さんはそのときの津波の光景をこう振り返る。
「荒浜の南長沼のあたりで白い壁が見えたのですが、最初はそれが何なのか全く分かりませんでした。ですが波の壁の上で何かが上下に動いているのに気づき、初めて津波だと分かったんです。この瞬間を『写真におさめたい』と考えていましたね」 佐藤さんは荒浜方面に自家用車で移動している最中に津波に気づき、無事に避難することができた。
「手持ちのカメラがなかったので、避難することに集中でき、助かったんだと思います」被災した佐藤さんは、荒浜地区の一角で地元の住民が現地再建を願って交流会やワークショップを開いているのを目にする。そこで興味を持って参加するうちに、同じ場にいた庄子さんと出会い、海辺の図書館の取り組みを知ったという。佐藤さんは、庄子さんと交流を重ねながら、荒浜の豊かさを多くの人と共有していきたいと思うようになり、海辺の図書館の運営メンバー兼カメラマンになった。
「23〜40歳くらいまでは船の上で過ごしており、そのころの荒浜のことはよく分からないんです。だからなのか、私が船に乗っていた当時のまちの様子を、ここに訪れる人に聞きながら、理解したいと思うのかもしれません」

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毎日、太白区にある自宅から海辺の図書館に通っているという佐藤さん