STORY 02

防災マニュアルを地域とともに練り上げ
仙台市地域防災リーダー(SBL)育成に力を注ぐ。

隣に人がいるだけで守り、守られる

現在、川平団地町内会自主防災会は「いざというときのための防災マニュアル」を作成し、全戸配布している。地震の発生から時系列に「各個人の行動」「自主防災会の活動」について記され、裏面には防災マップを掲載。一時避難場所はもとより応急給水所、防災倉庫などが明示され、使い勝手が良い。「町内会役員の名簿にも工夫しています。災害時にどの役職の人が何をするか定められているので、役員が交代しても混乱なく自分の役割を確認することができます」
全ての防災計画を主導してきただけに、島田さんの目配りは隅々にまで及んでいる。島田さんを防災活動に駆り立てるものとは何なのだろう。「隣に人がいるだけで守り、守られる。これが私の行動の原点です。防災にとって人と人とのつながりが何より重要ですし、人と人がつながっていれば災害が起きても安心していられると私は考えています」

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「いざというときのための防災マニュアル」はラミネート加工され、汚れにくく長期間の使用に耐えられる
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避難訓練では応急給水所の使い方なども住民は学ぶことができる

SBLの環境整備と女性の力に期待する

震災後、仙台市青葉区連合町内会長協議会が積極的に取り組んでいるのは、町内会において防災活動の中核を担う仙台市地域防災リーダー(SBL)が活躍できる環境づくりだ。SBLは活動を行う上で一定の発言力と発言の機会を持つことが重要なため、できるだけ連合町内会内での役割を明確にしていく必要がある。地域住民に対してもSBLの存在と役割について周知徹底していかなければならない。「SBLは若い人にも担ってほしいと考え、現在青葉区にいるSBLのうち100人は町内会が推薦し、ほか50人は公募形式になっています。公募により若返りは図られていますが、新たな課題も浮かび上がってきました。公募のSBLは町内会の役員ではないため、地域の現状が分かりませんし、町内会が受け入れにくい。そこで現在は仙台市危機管理室と連携し、公募SBLについて各町内会へ情報発信するようにしています」
島田さんは災害時における女性の力にも注目している。「指定避難所を開設した際、小さいお子さんのオムツやミルクが月齢によって違うことを知らず、一種類しか置いていなかった。こういったところに女性の視点は不可欠です。また、避難所のトイレはすぐ詰まって汚くなりがちですが、トイレの見回りも男性より女性の方が避難者には抵抗が少ないでしょう」

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島田さんは仙台市青葉区連合町内会長協議会会長として、マンション住民に対する防災への啓発や仕組みづくりにも取り込んでいる
STORY 03

防災への取り組みは人と人とがつながり
自ら考え率先して行動することから。

震災語り部として日本全国を回る

2011年の夏、岡山県庁から島田さんに講演の依頼が舞い込んだ。これが、現在ライフワークとして島田さんが取り組んでいる「語り部」活動のきっかけになっている。「『震災の状況や体験を語ってほしい』という依頼でした。私は長年にわたり町内会活動に携わっていた経験から、地域社会におけるコミュニケーションの重要性を身にしみて感じていました。コミュニケーションを深めるためには、防災から取りかかるのが最も手っ取り早いのです」
岡山での講演以降、各地から講演依頼が寄せられた。島田さんは2013年より総務省「震災伝承十年プロジェクト」語り部となり、現在も活動を継続中だ。島田さんは語り部として全国を回ってみると、地域によってコミュニティ活動の活発さも防災に対する考え方もまちまちであることに改めて気付かされたという。「一般的にコミュニティ活動が活発な地域は防災にもしっかり取り組んでいるところが多く、そうでない地域は防災への取り組みが不十分なところが多いようです。これまで北海道から沖縄まで全国30ヵ所ほどを回りましたが、大きな災害を経験したことのない地域ではどうしても危機意識が低くなりがちで、防災が自分ごとになっていません。しかし、実際に被災してからでは遅い。災害が起きる前に危機意識を高めてもらい、防災に関して啓蒙するのが語り部の責務だと考えています」

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地域のコミュニティが防災上最も役に立つと力説する島田さん

町内会の行事全てが防災訓練に

日本のどこに住んでいても、住み慣れた土地で皆が安心して暮らせるのが一番だと島田さんは強調する。「防災を自治体任せにしてはいけません。自分たちができることを率先して行うことが何より重要です。自助・共助・公助どれも必要ですが、それぞれの役割が異なります。発災して間もなくは自分や自分の家族を守り助け合う自助、発災から3日間は共助、その後が公助の出番となります」
防災に関する島田さんの持論は明快だ。「私は町内会の行事全てが防災訓練だと捉えています。地域の運動会も夏祭りも、地域住民が相互に連携し、協力し合うことにより行われます。町内会の行事に必要なのは人と人とのつながりです。これは防災にとっても極めて重要なのです」
自分たちで考え、各々がきちんと役割分担することにより、的確・迅速に行動へ移すことができる。そう信じて、島田さんは防災活動を地元だけでなく日本全国に広めていく使命感に燃えている。

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地域住民が一致団結して防災訓練を行うことで、災害時に被害を最小限に食い止めることができる