STORY 02

集まって言葉を交わし、
つながりを深めるための場所。

誰もが気軽に、簡単に楽しめること

活動内容は、料理教室やフラワーアレンジメント、折り紙教室、塗り絵教室など多岐にわたる。調理器具を使わず簡単に作れる料理を紹介する料理教室では、復興支援に携わる企業や地元の大学生たちがボランティアとして加わった。「若い人たちと活動できるのが楽しい」と、参加者からも好評の企画となっている。「フラワーアレンジメントでは、やってみたいという若い子も参加してくれるようになりました。親子で参加する方もいて、世代の広がりを感じます」
企画を考えるときに気を付けているのは、難しすぎず、誰もが簡単に楽しめることだ。「難しすぎたり、作るのに時間がかかりすぎたりしてしまうと、『私にはできない』『レベルが高くてついていけない』と、自信をなくしたりモチベーションが下がったりして、次から参加してもらえなくなってしまうことがあります。だから、できるだけ簡単なものを作りたい、と講師の方にはお願いするようにしています」

企画する側にも参加する側にも負担にならないようにすることも、次の行事につなげる秘訣だと、村主さんと平山さんは口を揃えて言う。「頻繁に開催すると企画側はそれだけに奔走しスタミナ切れを起こしてしまうし、参加する側も、『行かなきゃいけない』と感じるようになってしまう。だから、活動は年に4~5回程度に抑え、一回一回がより楽しい時間になるよう、心がけています」
女子会の本来の目的は、地域の方々の交流のきっかけをつくり、楽しんでもらうことだ。ものを作ることに集中する時間があれば、集まってもネガティブな話ばかりで気分が落ち込むこともない。なにより作品として手元に残ることで思い出にもなるし、話題も広がる。震災で傷ついた心を元気づけるために始まった活動の基本的な方針は今も変わらない。

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料理教室とフラワーアレンジメントの様子。料理教室では、メンバーは女子会オリジナルのピンクのエプロンを身に付ける

地域のために活動する女性たち

料理教室や各講座を開催するにあたって、講師はせんだい男女共同参画財団から紹介してもらうことが多いという。現在は「女性と防災まちづくり」の取り組みの中で、地域活動における女性のリーダーシップ促進の実現に向けた活動を行なっている財団だが、そのアドバイザリー・フェローを務める遠藤恵子氏は村主さんの恩師でもあった。そのつながりと、地域のために活動していることへの評価から、村主さんは2015年に開催された第3回国連防災世界会議のパブリック・フォーラム「女性と防災」のテーマ館の中で開催されたシンポジウム「トーク×トーク 女性たちのリーダーシップ」に登壇。女子会としての活動について広く発信する機会を得た。「被災の経験を振り返り、どういう思いで『女子会』を立ち上げ、活動してきたのかを話していくうちに、気持ちが整理されていきました。とても貴重な経験でした」

地区の避難訓練では炊き出し練習も

女子会では、地区の祭りや避難訓練での炊き出しを行うこともある。調理現場において、女性たちの力は絶大だ。男性陣が用意した食材を使っていも煮に仕上げたり、津波避難タワーに常備しているアルファ米でおにぎりを作ったりと、被災当時を思い出しながら練習に取り組んだ。「災害時でも水やお湯に浸すだけで食べられるアルファ米を普段使っている人はあまりいないと思います。作り方は説明書に書かれていますが、作った経験があれば、いざというときに役立つだろうと感じました」

普段から「防災」を意識することは、村主さんも平山さんもないというが、活動の原点には、被災した経験や、地域を元気にしたいという思いがあふれている。

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村主さんが建設委員会の委員を務めた新しい新浜町内会集会所横には、津波避難タワーがある
STORY 03

日々を楽しく過ごすため
つながることを大切にしたい。

高齢者にも楽しんでもらえるように

新浜地区は高齢者の多い地域だ。しばらく女子会の活動に参加していた人の中にも、なかなか外に出たがらず参加頻度が減ってしまった人もいる。こうした高齢者たちにも参加してもらえるような活動を考えることが、当面の課題でもある。
「2020年はコロナ禍で女子会の活動そのものがままならなくなりました。それでも、2月に開催した『セルフケアデイ』はやってよかったと思います。ペアを組んでツボ押しやマッサージをしたのですが、むくみが解消されたりしてとても喜んでいただけましたから」
いつまでもきれいでいたいと思う女性の心に寄り添った活動ができるのも、女子会ならではの気配りがあるからだ。2019年には地区にあった老人クラブが解散し、高齢者の交流の機会がますます減っている中、女子会の活動は高齢者の見守りの役割も担っていくことになるのだろう。

みんなが楽しければ、自分たちも楽しい

10年を区切りに自立するにあたって、今後は講師への依頼料や材料費などに必要な資金は、行政の支援金を頼りにせず、自分たちで工面していくことになる。しかし、村主さんや平山さんの表情には焦りも失望も見られなかった。「やり方はいくらでもあるんですよ。例えば、以前開催した塗り絵教室では、村主さんご自身が講師になって下絵を人数分用意したこともありましたし、メンバーの中にいる切り絵が得意な方にお願いして講師になっていただいたこともありました」
自分たちでできることを、自分たちのできる範囲でやる。地域の活性化ももちろんだが、村主さんたちにとって、日々を楽しく過ごせることが一番重要なことなのだ。
「周りが元気じゃないと自分も元気になれない。逆に、みんなが楽しければ私たちも楽しい。震災直後のことを思い出す度に、改めてそう感じます」

津波で壊滅的な被害を受けてなお、戻りたいと思い戻ってきた住民が大半を占める新浜町内会の人たちは、さまざまな面で協力し、支え合いながら、地域の再建に取り組んできた。「楽しく生活したい」という純粋な思いを土台として活動してきた女子会は、その象徴的な存在とも言えるだろう。山神講で地域とつながっていた村主さんが交流することの楽しさや大切さを感じ取り、もう一度つながりを持ちたいと願ったように、若い人たちの中からも活動を続けたいと考える人が出てくると、2人は確信している。「存続できない町内会も少なくない中、未来にこの地域を残していくためにも続いていってほしい。そして『明日』を楽しく過ごすためにも、私自身、できる限り続けていきたいと思っています」

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自分でできる範囲で、無理のない程度にがんばりたいと言う村主さん。平山さんは、地域のために動いてくれる村主さんのため、できるだけ手伝いたいと語る