キーパーソンインタビュー

「水産×IT」が被災した漁業を活性化させ、
新たな仕組みやより良い社会へと導く。
アンデックス株式会社 代表取締役 三嶋 順さん

アンデックス株式会社は仙台に本社を置くITベンチャー企業だ。コンピューターのシステム受託開発を行うかたわら、独自の研究開発に定評がある。設立以来、代表取締役の三嶋さんは「地域や現場の課題を解決することが社会貢献になる」との信念のもと、地域に根ざした活動を積極的に展開。沿岸部が被災し宮城県の漁業が大きなダメージを受けた事実を目の当たりにして、先進的な取り組みを始めている。

STORY 01

持てる技術で地域に貢献し、
社会から信頼される企業を目指す。

仙台市の起業家支援プログラムを活用して、2008年11月に起業したアンデックス株式会社(以下「アンデックス」)。設立時10余人だった社員は53人になり、現在は東京・盛岡・青森にもオフィスを構えている。アンデックスは業界内で後発の企業であるにもかかわらず、先進的な取り組みを数多く手がけてきた。三嶋さんは同業他社との差別化を念頭に置きつつ、熱い思いで地域を見つめている。

一番を目指して独自路線を歩む

Webサイトだけでは実現できない、双方向で情報のやり取りをする際に有効なモバイルアプリの開発を進めるなど、アンデックスが手がけた事業は様々な分野で高い評価を得ている。社名の「アンデックス」は、フランス語で人差し指を表わす「アンデクス(index)」を元にした造語。ロゴマークにも示される通り「一番」を意味している。
アンデックスは創業から3年余りで「一番」になった。2012年3月11日に東京で行われた「人と物の移動に役立つITS防災アプリアワード」発表展示会で、自社開発した「マプコミ」が最優秀賞(ゴールド賞)を獲得。マプコミは本来観光支援目的のアプリだが、防災アプリとしても使用できる。地元の同業者の多くが受託型ビジネスを展開する中にあって、アンデックスは自社開発に積極的に取り組み、独自の路線を歩みつづけている。

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人差し指で一番を表わすアンデックスのロゴマーク
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「人と物の移動に役立つITS防災アプリアワード」で自社開発したマプコミが最優秀賞を授賞

畑違いの仕事で積んだ経験を生かす

技術で一番、地域で一番を目指すアンデックスが心がけていることがある。ものづくりのための技術を磨くだけでなく、その技術で地域を良くして、地域から信頼されたい。この思いは三嶋さんの経歴と経験により育まれた哲学でもある。「私が社会に出て、最初に就職したのはITとは縁もゆかりもない食品メーカーでした。そこで6年間勤め、その後食品輸入加工会社で営業と企画を担当しました。当時は2〜3カ月おきにタイやフィリピン、インドネシア等を訪問し、エビの買い付けを行ったものです。ここで私は水産業の現場がどれほど苦労しているかを知りました。流通の仕組みと販売についても学ぶことができました」
輸入エビの二次加工は三陸沿岸の業者に委託し、ここで三嶋さんは地元の漁業関係者と初めて接点を持つことになった。

1991年に三嶋さんはシステム受託開発の会社に転職。畑違いの新しい職場では、新たな学びがあったという。「小さな会社だったので、営業企画という肩書きでしたが、何でもやったものです。いろいろな業務をこなすうちに、会社の動かし方や人と人との付き合い方など、学ぶことはたくさんありました。また、当時はスマートフォンが出始めた頃。従来のパソコンとは違った新しいビジネスの可能性を確信しました」
一念発起してアンデックスを立ち上げた三嶋さんに、設立当初にはまだ、ITを水産業に生かすという構想はなかった。ところが震災を契機に、新たな転機がやって来た。

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食品輸入加工会社等で養われたノウハウをITに生かす三嶋さん