キーパーソンインタビュー

あなたができるちょこっとの輪を広げ、
障害を持っていても共存・共生できる社会を。
特定非営利活動法人アフタースクールぱるけ
代表理事 谷津 尚美さん(写真右)
管理者兼相談支援専門員 介護福祉士 
熊谷 幸恵さん(写真中央)
管理者兼児童発達支援管理責任者 介護福祉士
富澤 美幸さん(写真左)

障害児者の余暇、及びその家族を支援する事業を展開しているアフタースクールぱるけ。障害を持っていても地域の一員として安心して共存・共生できる社会の構築を目的に様々な取り組みを行ってきた。震災の教訓を踏まえて、障害児者の保護者とスタッフが協働で始めたのが「ちょこっと・ねっと」。困った時に「助けて」と言える受援力(支援を受ける力)をつけてもらいたいと願い、地域のイベント等で活発に啓発活動を繰り広げている。

STORY 01

いろいろな楽しい経験を重ねて
心を開放し、豊かな心が育まれる。

障害を持つ子どもの介護にかかわっている家族は、一時でも自分の時間を持つことで心身のリフレッシュを図ることができ、新たな気持ちで再び子どもに向き合うことができる。これを実現するため、アフタースクールぱるけ(以下「ぱるけ」)は設立された。

のびのびと放課後や休暇を過ごす意義

2002年から学校の週5日制が始まり、1年の45%が休みになったが、心身に障害を持った子どもの多くは、スクールバスなどで学区外の支援学校に通ったり、保護者の送迎などで地域の学校に通っているため、支援なしに休暇を外で過ごすのは難しい。2001年9月に仙台市内の特別支援学校2校の全校児童生徒を対象に行ったアンケート調査によると、「近所に学校の友だちがいない」「一人で外出が難しく、誰かのサポートが常時必要である」「障害を持っている子どもだけで利用できる場所が近くにない」などの理由から約70%の障害を持つ子どもたちが放課後や休暇中、家で一人または家族と過ごしているという結果が出た。
このアンケートを実施したのが谷津さんだ。「障害を持った子どもたちの70%が、1年の45%を家で一人または家族と過ごしているという現実は、本人にとっても家族にとっても憂慮すべきことだと感じました。障害のあるなしにかかわらず、放課後や休暇中に家族以外の人と、遊びや外出などいろいろな楽しい経験を積み重ねることで心の開放を促し、思いやりや優しさなどの心の豊かさ、人間関係の構築、社会のルールなどを学ぶことができるのに、それが叶えられないのですから」

余暇の過ごし方を見つけることは、子どもの健全育成の観点からも非常に重要な部分を担う。谷津さんは、障害を持っていても同年代の友だちなどと、のびのびと安心して楽しく放課後や休暇を過ごしたい、過ごさせたいという本人や家族の願いを叶えるため、2002年5月にぱるけを設立した。ぱるけとはスペイン語で「公園」を意味する。
ぱるけのモットーを谷津さんに聞いた。「私たちは子どもたちと泣いたり笑ったりしながら、一緒に成長していきたいと考えています。そのため、特にスタッフの研修には力を入れています。大切なお子さまの成長をご家族の方と一緒に見守っていくため、ご家庭や関係機関との連携を大切にして、いろいろな人との交流を深めていきたいですね。地域とのつながりや世代間の交流、国際交流なども重要です」

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ぱるけ代表理事 谷津尚美さん

本人の希望を踏まえたサービス

ぱるけの事業は多岐にわたる。「ひとつは放課後等デイサービスです。これは学校に就学している障害児者を対象として、学校授業終了後または休業日において生活能力向上のために必要な訓練、社会との交流促進などの便宜を行うもので、2020年8月現在で仙台市内には放課後等デイサービスの事業所が129箇所あります。ぱるけでは中山・西中田・南仙台で地域の学校と連携・協働して支援を行っています」と谷津さん。自立した日常生活を営むために必要な訓練、創作活動や作業活動、地域交流の機会の提供、余暇の提供など多様なメニューを設け「本人の希望を踏まえたサービス」を行っている。

他にも障害児者計画相談事業、ボランティア育成事業、また地域イベント等において障害者就労施設物品普及活動を行う傍ら、谷津さんが特に力を入れている事業がある。「ぱるけを利用している子どもたちのきょうだいを対象に、一緒に楽しい時間を過ごしながら仲間づくりを行う『あみーごクラブ(きょうだいの会)』、ぱるけ西中田を卒業し、社会人となった仲間との再会を喜び、参加者同士がつながりを深める卒業生プログラム『あみすた』は、障害を持つ子だけではなく、家族を支援するためのもの。自分がやりたいことを、友だちやぱるけのスタッフと一緒に楽しめるところが良いですね」

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2020年10月、青葉区中山に事務局を移転したアフタースクールぱるけ
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大阪のNPO法人しぶたねさんの呼びかけにより、2019年に4月10日が「きょうだいの日」と制定された。ぱるけも発起人として参加。しぶたねさんが作った啓発のためのコースターは仙台市内でも配布されている