STORY 02

親しみやすい、わかりやすい、
新しい避難訓練のあり方を探して。

地域の小中学校での避難訓練と防災教育

防災⼠協議会が設⽴されて以降、Team Bousaisiはすぐに地域の中で活動を開始したと、舩渡教授は言う。「最初に活動したのは、主に地域の避難訓練への参加です。いろいろなところにこちらから声をかけて地域の⼩中学校で⾏われている避難訓練に参加しました。地域の避難訓練はあまり⼈が集まらないので、Team Bousaisiの参加は⾮常に歓迎されました。講師役として参加することで“防災の知識が学べるなら”と、地域の⼈たちの参加も増えました。そうして続けているうちに、だんだん⼩中学校で防災教育をやってくれないか、とお声がけされるようになりました」

関さんは、⼩中学校での避難訓練を数多く経験したという。「⼩学校と中学校の避難訓練を別々に同時進⾏するという訓練がありました。⼩学校では“ぼうさいダック”という防災教育カードゲームを使いました。地震が起きた時の姿勢、建物が崩れた時に頭を抱えるなどのジェスチャーを動物にたとえて、“地震の時はダック”など、声をかけながら、⼩学1年⽣と⼀緒に訓練をしました。中学校の場合は簡易トイレを⼀緒に作ったり、アルファ⽶のご飯を調理室で作ったりして、コミュニケーションを図りながら協⼒して実施しました」

小中学校での防災教育については、舩渡教授が学生に教育の仕方を指導するのではなく、学生たちが自分で考えて講師役を務める。「学⽣防災⼠は、基本的なことはみんな⾃分たちで運営し、最初から学⽣が児童・生徒に防災を教えます。本学は教育学部もあって教員を⽬指している学⽣もいますので、防災教育の現場がまさに教育実習の実践の場にもなります。⼤学の講義としては防災教育は⾏っていないので、防災⼠の講座で学んだことを⼟台にすることで、⼦どもたちにとって学びやすい方法に気づいたり、どうしたら防災の経験を⼦どもたちと共有できるのかということを、試⾏錯誤しながら活動しています」

わかりやすく教えるという学び

Team Bousaisiは設⽴されてから、毎年様々な学⽣が参加し、上級⽣から下級⽣にTeam Bousaisiの⼼得を受け継いできた。関さんと⾓⽥さんは1年⽣の時から参加している。
関さんは外国⼈向けの防災活動が記憶に残っているという。「1年⽣の時に、この地域に居住している外国⼈向けの地域防災訓練が本学のステーションキャンパスであって、そのサポートで参加しました。通訳を担当する他のサークルと⼀緒に、実技でAEDの使い⽅や⼼肺蘇⽣の方法を学びました。外国の方たちは⾔葉が通じなかったり、避難する時にどうしたらいいかわからないので、このような防災啓発‧避難訓練は大切な⽀援活動の1つだと思いました」

⾓⽥さんは、⼦どもたち向けの避難訓練や防災訓練の狙いについて、こう話す。「⼩学⽣に向けての防災教育としては、親しみやすい防災活動をテーマとし、堅くて関⼼をもってもらえないようなイメージがある防災を、教育学部の⼈たちとも協⼒して、親しみやすく簡単に理解できるよう工夫して実施してきました。学⽣で歳が近いからこそ教えられることがあると思っています」

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外国人向けの地域防災訓練での炊き出しの様子
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消防士立ち会いのもとで濃煙体験も実施

防災をキーワードとした活動の広がり

従来の⼩中学校での避難訓練や防災教育に加えて、新しい取り組みも増えてきた。「学⽣防災⼠メンバーの地元局ラジオ番組への出演もその1つです」と⾓⽥さんは話す。「NHKの第⼀ラジオに、私たちTeam Bousaisiの学⽣たちが週替わりで出演し、防災⼠メンバーのいろいろな活動の体験談や防災のヒントなどをお伝えしています」

また、仙台⻘年会議所がつくる防災のホームページの防災コンテンツ作成に、Team Bousaisiが協⼒しているという。
「仙台市の各地区ごとの町内会⻑さんに、どんな防災活動や対策を考えているのかインタビュー取材をさせていただいて、その記録をホームページにアップしていきます。町内会ごとに地形の特徴などは異なっていると思いますが、ずっとそこに住んでいる⽅たちだからこその災害対策の考え⽅があると思うので、多くの方の防災に役立つ⼤切なヒントも提供していただけるのではという期待があります」と角田さん。

また、「河北新報社、東北福祉⼤学、仙台市の3者で2016年に結んだ“地域⼈材育成及び社会貢献事業に関する包括的連携協定”に基づき、防災リーダーを⽬指す若者が連続講座を受講する伝承企画“311『伝える∕備える』次世代塾”に2017年から携わっています」と舩渡教授は説明する。

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様々な場で活動を展開する東北福祉大学のTeam Bousaisi
STORY 03

若い世代から発信して
次の人につないでいく防災の学び。

防災意識を持つ仲間とともに

Team Bousaisiは、様々な活動を通して、常に新しいネットワークを広げている。⾓⽥さんは、他県の⽅との交流も多い。「東京ビッグサイトで毎年開催されていた“STAND UP SUMMIT”という復興イベントに参加させていただいていました。復興に対する意識の⾵化防⽌と次世代の育成を⽬的として、東北、東京、海外の学⽣が集まって議論を重ねるというものです。各県から集まった中学⽣‧⾼校⽣に私たちも混じって、⼀緒に東⽇本⼤震災の教訓などを話し合ったり、私たちの活動について発表したりしました。学びもたくさんあり、復興や防災について同じ意識を持つ仲間ができました。南三陸町⽥の浦では、被災地復興⽀援を⽬的として地域の⼈たちと⼦どもたち向けに毎年夏に開催される“海の⼤運動会”に東北福祉⼤学舩渡研究室として協⼒・参加しています。いろいろなNPO法⼈や滋賀県⽴⼤学⽥の浦ファンクラブの学⽣と私たち学⽣防災⼠が連携して運動会をサポートしているので、他県の学⽣との交流が深まります」

⼤学では今、⾼⼤連携という、⾼校⽣との連携を推進する動きが活発化してきている。舩渡教授も、Team Bousaisiが⾼校⽣と⼀緒に活動をしたり、⼀緒に勉強していくようなことができればと考えている。「⾼校⽣は、次世代層をけん引していく存在として、防災・減災に少しでも興味・関心のある人には防災⼠の資格をとってもらい、そこで災害に対する知識をもってもらうことが⼤切で、そこからまた次の活動につながっていけばと思っています。ただ、今はコロナ禍の状況ですので、オンラインを使うなどの⼯夫が必要かなと思います。趣旨としては震災を⾵化させないということと、これから起こってくる災害に対する準備と、いざ災害があった時の減災などにつながるように、次世代層の防災意識を⾼めていくというのが狙いです」

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仙台防災未来フォーラム2019のセッション
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STAND UP SUMMIT 2019のセッション

防災リーダーとしての自覚

震災から10年経つと、防災⼠の資格を取ろうと考える人が少なくなっているという。「本学では、防災⼠研修講座を受けると単位が取れるようにしましたが、資格にチャレンジすることで⾃分が防災のリーダーであるという意識、⾃覚が持てるようになると思います」

災害については、地震‧津波だけではなく、最近では台⾵や局地豪⾬などに対する勉強も必要と舩渡教授は話す。「防災⼠の資格を取るときに、気象の話とか、台⾵が発⽣する要因、どうして⼟砂災害が起きるか、ハザードマップの判別の仕⽅なども講座の中に含まれています。そこをきっかけにいろいろ⾃分で調べてみようということになりますし、気象情報への関心も高まると思います。それから、防災⼠スキルアップ研修会というものが年に1回あります。その時に特別な講師、その道のプロフェッショナルな講師に来ていただくので、より専⾨的な興味深い話を学べると思います」

震災の記憶が途絶えないように

関さんは、自分で防災士の活動をしていても、時が経つと震災の詳細や自分の行動について思い出しづらくなりがちだと、震災の記憶の⾵化を⼼配している。
「私たちから伝えていくという⾯とともに、皆さんにも興味を持ってほしいですね。興味を持たないと『防災』と⾔われただけでは⼦どもたちも、そうなんだ、くらいで終わってしまいますが、興味をもてば視野も広がって、⾃分のもっているスキルも幅広くなって成⻑につながると思います。防災を学ぶことでふだん⽣活している中でも観察⼒などが⾝につくと思うので、興味を持つきっかけを掴んでほしいなと思います。ボランティアを⼀度体験して何かしら防災へのきっかけを持ってもらい、そこからさまざまな活動に参加することで⾃分⾃⾝を成⻑させていくのがいいのかなと思います」ふだんからみんなが意識すれば、⽇本全体が少しずつ変わっていく、と信念を持っている。

⾓⽥さんは、聞くだけではなく、⾃分で実際に見て知ることが⼤事だと話す。「いくら防災の勉強をしても⾃分は津波を経験したわけではないので実際のところはわかりません。私は津波があった場所に⾏って、震災遺構として残っている学校を回ったりしました。百聞は⼀⾒に如かずと⾔いますが、聞くだけでなく実際に見て知ることで、災害が起きてしまった時に慌てないで⾏動できるようにしてほしいと思います」
また防災⼠として、もし災害が起きた時には避難所の運営などを率先して⾏わなければ、と思っているという。「防災は災害が起きる前の備えが⼤事ですから、家に置いておく備蓄品など準備できることはいろいろあると思います。それを⾃分だけではなく、周りに発信していかなければいけないと思っています。これからもいろいろな場所で若い世代が発信し、震災を知らない若い⼈、⼦どもたちの代に震災の記憶が途絶えないように、つないでいかなければと思います」

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