言葉にならない思いを抱えながら、ここまで歩んできた

木村 資金面とかの苦労はあったけど、「HOPE FOR project」は長く続いてきたと思います。

髙山 始めてから数年間は、周りの人から「いつまでやるの?」と聞かれることも多かったよね。でも仙台市内には3月11日に思いを馳せられる場が少ないので、このプロジェクトを続けていきたいと思います。

川村 髙山が続ける限り、私も一緒に活動していきたいと思ってる(笑)。

髙山 ……ありがとう(笑)。

阿部 髙山が頑張ってるから、これからも応援していきたいですね。同級生の中に、震災時に幼い子どもを亡くした人がいるので、私はその弔いの気持ちもあって続けています。

髙山 表立って言ったことはないですが、携わる同級生みんなが根底にその思いを持っています。震災後、このプロジェクトでともに活動していた同級生がいたのですが、その人は病気で途中からこの活動に参加できなくなってしまったんです。いつも一生懸命に手伝ってくれていたので、このプロジェクトや荒浜に対して特別な思いを持っていたんだろうなと思います。その友人の思いなども心の片隅に置きながら、活動を続けています。

阿部 みんな言語化できない色々な思いを持って活動しているんじゃないかな。

髙山 当日イベントに参加する人の中にも、震災で亡くなった人を悼み、震災前の荒浜に思いを寄せている人はきっとたくさんいるでしょう。

川村 年に1回地元に戻ってきて、思いを馳せるだけでも、きっと大きな意味があると思いますね。

髙山 参加者には、束の間でも荒浜でゆっくり自分の時間を過ごしてもらえればと思っています。

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「被災者の中には、現在も言葉にできない複雑な思いを持っている人が多い」と話す4人

コロナ禍における「HOPE FOR project」を考える

阿部 最近は新しく「HOPE FOR project」の映像を作りました。

髙山 震災10年というタイミングもあったし、コロナ禍でもあるので、これまでの10年間のまとめとして製作しました。

木村 動画では運営メンバーのリアルな声を取り上げてるよね。

髙山 昨年はコロナの影響で、イベントを大々的に行うことができなかったので、この機会に携わってくれた方々に自分たちの思いなどを語ってもらいました。この映像を通して、多くの人に「HOPE FOR project」の取り組みを知ってもらえたらうれしいですし、舞台裏の様子が届けられたらいいなと思っています。

髙山 今はSNSで紹介してますが、今後は「震災遺構 仙台市立荒浜小学校」などの震災関連施設でも活用してもらえたらよいですね。

阿部 それはいいね。

川村 昨年はコロナ禍により現地での音楽演奏ができなかったので、代わりに音楽配信をしました。今年のイベントも色々工夫が必要ですね。

髙山 昨年同様、イベントは大々的にはできないですね。慎重に実施したいと思います。

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地域の人の思いを大切に、もともと荒浜に住んでいた人が、いつでも帰ってこれる場にしたいと願うメンバー

生まれ育った地域を大切に、今後も活動を続けていく

今後の抱負をお聞かせください。

髙山 イベントの運営には資金面などの問題が絡んでくるので、行政や団体などと協力しながらうまく続けていきたいと思います。仙台市内で3月11日に思いを馳せられる場は数少ないので、「HOPE FOR project」は今後も残していきたいです。

川村 今のメンバーが引退したとしても、下の世代で同じ志を持つ人がいれば、こういった場づくりを担ってほしいと思います。急にこのプロジェクトがなくなってしまうのはやはり寂しいですね。

髙山 自分たちより一回り下の世代には、地元に愛着を持っている人がたくさんいます。その人たちの地域に対する思いは大切にしたいですね。

地域に思いを馳せるイベントといえば、「荒浜灯籠流し」もありますよね?

髙山 「荒浜灯籠流し」は荒浜地区に昔からあった伝統行事で、もともとお盆終わりの夜の時間帯に貞山堀で毎年開催してました。震災後は元地域住民の方々が安全面などを考慮して昼間に行ってくれていました。しかし、2018年に実行委員会の方から旗を降ろすという話があり、当時の町内会長の皆さまに了解を得て、それからは私が代表を務めながら、元地域住民の方々や有志の方々と共に、夜の灯籠流しの再生に向けて活動し始めました。

木村 2018年に、震災後初めての夜の灯籠流しができたんだよね。

髙山 当日は300人くらいの地域住民が集まってくださり、うれしかったですね。訪れた人には懐かしく思ってくれたようです。

阿部 「HOPE FOR project」や「荒浜灯籠流し」などを通じて、改めて故郷と向き合う機会が得られればいいですよね。これからも生まれ育った荒浜を大切に思いながら、活動を続けていきたいです。

川村 私は風船リリースや音楽にこだわらなくても、なんらかの形で3月11日に思い馳せる場を残していければいいなと思っています。これからもみんなで協力して頑張っていきたいです。

髙山 同級生を始め、多くの人から協力が得られたことに感謝しています。今後も周囲の支えを大切にしながら、人々の思いを共有できる場を作っていきたいと思います。

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荒浜で過ごしたかけがえのない時間を大切に、「HOPE FOR project」を続ける4人