大きな反響と継続することの大切さ

金ヶ崎 3.11キャンドルナイトが仙台市中心部で開催されることに意義がある、と私は考えています。たまたま開催日に通りすがりの人が興味を持ってくれてもいいし、市民の皆さんと同じ時間を共有できるなんて、素晴らしいことじゃないですか。現に3.11キャンドルナイトは様々な反響を呼んでいます。J:COMでは全国で中継され、中継を見た東北出身の方々が震災を見つめ直す機会にもなっています。

早瀬 海外へも発信されて、大きな反響をいただいています。また、佐々木君が言った通り、10歳以下の震災を知らない子どもたちに、紙コップにメッセージを書いてもらったり、授業で取り上げて話し合ってもらうことも凄いことですよ。

押野 3.11キャンドルナイトの実行委員会は、高校生連携協議会のコア・メンバーが企画段階から参加します。3.11キャンドルナイトに携わりたくて協議会に入る学生もいますし、私や小原さんのように1日ボランティアとして参加したのがきっかけの子もいます。今後は人数をもっと増やしていきたいですね。

金ヶ崎 もっと男子がほしい(笑)。歴代の会長は女子が多いよね。ボランティアも女子が目立つ。男子にも積極的に参加してもらいたい。最近は3.11キャンドルナイトに関わった協議会のOB・OGと2019年にグループラインも立ち上げています。高校卒業後、他の地域に移ってからも、このようなイベントに参加したり、イベントの立ち上げに関わるOB・OGもいるようです。グループラインに寄せられたコメントからは、3.11キャンドルナイトで培われた経験が彼らの人生に影響を及ぼしていることが感じられ、9年間にわたり携わってきた当事者として感無量です。

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様々な反響に手応えを感じている金ヶ崎さん
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時に厳しく、時に優しく高校生を導く河合さん
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高校生の発信する力を高く評価する北谷さん
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次世代へ引き継ぐ意義が大きいと考える早瀬さん

2020年の開催中止がもたらしたもの

金ヶ崎 2020年は新型コロナウイルスの感染拡大があり、残念ながら中止せざるを得ませんでした。メッセージを書いてもらった紙コップの回収も済ませ、ギリギリまで開催する方向で準備を進めていたのに。

押野 私たち高校生の間でも中止になるんじゃないか、と薄々感じていました。でも、実際に「中止」とせざるを得ない現実を突きつけられるとガーン!ですよ。前年は先ほどお話した通り関西のボランティア団体と交流するなど、それまでと違う経験をしていたこともあり、期待をふくらませて臨んだ2020年の中止は尚更ショックでした。もっともイベント自体は中止されましたが、準備段階で小学生に自分の経験を話したり、小学校で紙コップを回収した時に先生から当時の話をお聞きすることもできたのは良かったです。

佐々木 自分は2020年が初めてだったので楽しみにしていました。押野さんと同じように、準備段階で色々な経験ができたのは良かったと思います。最終的には自分たちで動画を作り、配信まで行いました。この動画は、震災をそれまでとは異なる視点から見つめ、震災当時や現在に至るまでの軌跡をたどり、今を生きる人たちにとって大切なことや未来に残していくべきことは何なのかを探すために作りました。仙台在住のシンガーソングライター伊東洋平さん、震災遺構仙台市立荒浜小学校の髙山智行さん、公益財団法人仙台観光国際協会のジャスティン・ベルガスさんの3人にインタビューしています。この動画により少しは自分たちの想いを伝えられたかな、と思っています。

北谷 動画の企画・取材等を全て高校生が行ったのは大きな成果でしょう。せんだいTube(仙台市動画プロモーションチャンネル)では、当日会場で放映する予定だったこの動画も配信されています。2020年は高校生にとって心残りだったと思いますが、達成感はあったのではないでしょうか。

小原 私も今までしたことのない経験ができました。企画の段階から関わることができましたし、電話でお願いするのも初体験。悩んだり緊張したりしましたが、どれも無駄じゃなかった。こういう経験はこれからの人生に生かしていければ、と思います。

河合 実は3月の時点では「中止」ではなく「延期」という見解でした。夏休みまで開催時期をずらしてはどうか、と模索したんですよ。結局コロナが終息せず中止になってしまいましたが。

金ヶ崎 2021年は開催を目指しています。現在はもう少しでテーマが決まる段階まで来ています。この一年で世の中が激変しましたが、オンラインによる開催だけでなく、会場とオンライン両方で行うハイブリッド開催も検討中です。私たちはできるだけ高校生の主体性を尊重してあげたい。高校生の皆さんには新しいアイディアをどんどん出してもらいたいですね。

佐々木 自分は絶対やりたい!1年前は新型コロナウイルスにどう対処していいか分かりませんでした。最近は感染者数が増えていますが、どう行動したら感染リスクを下げられるかも分かってきています。それを踏まえて、何かできることはきっと見つかるはずです。準備はしたけど何もできなかった、にはしたくない。

小原 開催するのが一番です。ウィズ・コロナの年だからこそ、私たちにできることを考える必要もあります。今しかできないことを考えていきたいですね。

押野 Zoomなどを使い、リモートで開催することも可能だと思います。様々な手法を検討して、後輩の皆さんには3.11キャンドルナイト実現に向けてぜひ頑張ってほしい。

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企画・運営から携わることによって、貴重な経験を積んだ押野さん
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コロナ禍の今だからこそ、自分たちにできることを考えたい、と語る小原さん
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準備を重ねて2021年は絶対開催させたい、と意気込む佐々木さん

転機を迎えた3.11キャンドルナイト

早瀬 3.11キャンドルナイトは、東日本大震災を見つめ直す機会にもなります。3月11日が世界の休日になってもいい、と私は思っています。

北谷 2021年は震災から10年という節目を迎えます。現在、市内での民間の復興イベントは3.11キャンドルナイトの他には、それほど多くは開催されていないと耳にしています。そういう意味でも3.11キャンドルナイトを今後も開催し続けていくことには意味があると思います。

河合 災害の記憶を風化させたくない想いは高校生の皆さんと一緒。コロナ禍の現在は徐々に新しい生活様式が定着しつつあり、仙台に暮らしながらリモートワークも当たり前になりつつあります。今後は地元にいる高校生連携協議会OBやOGにも活動に参加してもらえるよう働きかけていきたいですね。

金ヶ崎 イベントは小さくても続けていくことが何より。参加している学生がバトンを受け取り、後輩たちへつなげていくことが大切なのです。

押野 3.11キャンドルナイトの活動は、高校生のこの時期だからこそできることだと思います。私は貴重な経験を積ませてもらいましたし、この経験から進路を決めました。佐々木さんや小原さんたちをはじめ、後輩たちが本気で取り組んでいけば、ここでの経験が大人になってからもきっと役に立ちますよ。

小原 震災時、私は7歳でした。幼い頃の記憶はだんだん忘れてしまいがちですけど、きっかけがあれば思い出すもの。3.11キャンドルナイトは、そのきっかけになります。震災の経験や想いを次の世代へつなげていくためには、とても意義のあるイベントだと思います。

佐々木 震災について知らない人がどんどん増えています。だからこそ、3.11キャンドルナイトに、どういうカタチでもいいので一人でも多くの方に参加してほしい。自分が活動すれば、思い出すこと、感じることがたくさんあります。今後はより多くの方々に参加してもらうキャンドルナイトへと進化していくといいですね。


前回、新型コロナウイルスの影響で中止となり悔しい想いをしたが、それでも貴重な体験から高校生たちが得たものは大きかった。2021年の開催に向けて3.11キャンドルナイトは今、新たなスタートを切ろうとしている。

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高校生が先輩から後輩へ想いをつなぎ、大人メンバーがそれを温かく見守る実行委員会は、世代を超えて交流が深まっている