子どもが楽しく読めるような工夫を取り入れて

富澤 絵本作りに取り組み始めたのは、2年生の夏頃ですよね。

齋藤 はい。初めに全員でアイデアを出し合って、絵本の方向性を固めていきましたね。

小木田 最初は恐竜がメインキャラクターでしたっけ?

富澤 恐竜が暴れてけがをして、応急処置をするみたいな話の流れだったと思います。

小木田 他にもおもちゃの兵隊を登場させるという意見も出ましたよね。

齋藤 魔法を使ってけがを治すとかも。

富澤 色々なアイデアを出した結果、現在の「ちいさなゆめのものがたり」になりました。

齋藤 ストーリーとしては、主人公の「ももか」という女の子の夢を表現しているんです。地震が起き、ももかはおつかいの途中の男の子に出会います。リンゴを探しながら2人で地震について学び、最後は男の子のおばあちゃんの家に戻るという夢の中のお話です。頭を守らなければいけないよ、とか走ってはいけないよ、ということを物語を通して伝えてあげられるように工夫しています。

鉢呂 仙台白百合女子大学の元学長にも協力いただいて絵本を作成しましたね。元学長は児童文学の研究者だったので、物語の展開の仕方などを詳しく教えてくれました。

土屋 学術的な知見を踏まえて作成したので、物語としてはうまく出来上がったのではないかと思います。

富澤 今まで絵本を作ったことがなかったですし、自分でストーリーを考えることもなかったので、とても大変でした。世界観作りや場面設定など本当に悩みましたね。

小木田 場面分けが大変でした。物語がまとまらなくて、セリフの順番を入れ替えたりとか。

富澤 セリフは全部ひらがなだし、どうしようかなと思っていて。でも、イラスト担当の齋藤さんの絵を見て、みんなの考えが一つにまとまってきました。

鉢呂 主人公の女の子はどうして「ももか」なんですか?

齋藤 私が小さい頃よく遊んでいた友達が「ももか」だったからです。私はもともと絵を描くことが好きで、なるべくオリジナルのものを描きたいと思っていたんです。自分の経験を基に、小さい頃よく遊んでいた友達を主人公のモデルにしてみました。

土屋 本当に実在するんですね。

鉢呂 背景の電信柱に「バイトぼしゅう」って書いてあるのが、現実感があって面白いなと思いました。

富澤 細かいところにもこだわっていますよね。

土屋 子どもは大人と視点が全然違うらしいです。一般的に子どもは、大人が気付かないような細かいところにも気付くそうです。

齋藤 私は細かく描くのが好きだし、動物も好きなので、絵本の中にはたくさん動物を描いています。

小木田 動物はほとんどのページに登場しますよね。

齋藤 はい。私のポイントは表紙のタイトルの「な」に小さいてんとう虫を描いたことです。子どもたちに気付いてもらえたらうれしいです。

鉢呂 絵本のサイズにもこだわっているんですよね。

小木田 持ち運びしやすいように手のひらサイズにしました。

齋藤 小さい子も読むので、あんまり大きいと持ちにくいだろうなと思って、サイズにもこだわりました。たくさんの家庭で手に取って読んでもらえるとうれしいです。

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絵本はオールカラー中綴じ46ページ
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イラストはすべて手書き。色鉛筆で描かれており、手づくりの温かさが感じられる

これまでの取り組みが評価され、仙台市防災功労表彰を受賞

土屋 絵本は今年初めに出来上がりました。試作品は「仙台防災未来フォーラム」の展示ブースなどで発表し、多くの反響がありました。

鉢呂 展示ブースでは、生徒たちが作った絵本がほしいという声がたくさん聞かれ、ニーズがあることが分かりました。

富澤 小さい子どもがいるお母さんとかに、これはもらえないの?と聞かれた時はうれしかったです。

土屋 愛知で子ども向けに防災の活動をしている人が来て、絵本をお母さんたちに配りたいという話もされましたよね。

鉢呂 そうですね。たくさんの人から需要がありました。学校の隣にある宮城県図書館からも問い合わせがありました。実際に図書館に絵本が置かれていたりしますよ。

小木田 私たちの取り組みが多くの人に評価されるのは本当にうれしく思います。仙台市防災功労表彰につながったのは、私たち4回生の取り組みだけではなくて、先輩たちのこれまでの努力も認められたからですよね。

鉢呂 そうです。これまでの取り組みが総合的に評価され、表彰に結び付いたんですよ。

土屋 このような表彰に結び付いたことは純粋にうれしいですし、誇りに思います。先輩たちにも感謝しながら、私たちの活動を後輩たちにもつないでいきたいと思います。

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2020年1月、仙台防災功労表彰の第一号として表彰された

一人でも多くの人に、防災について考えてもらえるように

土屋 皆さんはこれまでの取り組みを振り返って、どのように感じていますか?

富沢 全然何も決まっていなかったところから、不安の中やってきたので、絵本を作っている時もこれは本当に形になるのだろうかと思っていました。でも、仙台防災未来フォーラムでたくさんの反響があったことや、仙台市防災功労表彰に結び付いたことなどから、成果が目に見えて表れるようになり、とてもうれしかったです。

土屋 私も1年生から同じメンバーで探究してきて、成果が形になったのが単純にうれしいです。実際、絵本が完成したときは安心しました。この絵本をきっかけに少しでも震災について知ろうと思ってくれたらいいなと思います。

齋藤 家族で少しでも話し合ってもらうきっかけが作れればいいですよね。子どもがこの絵本を読んで、大人になっても内容を思い出してくれることを願っています。まだ宮城県内の一部にしか配布されていないので、先輩たちみたいにもっと色々なところに配っていけたらと思います。

小木田 本当にたくさんの人に読んでもらいたいですよね。私はこの活動を通して、より防災の知識が付いたと思っています。もし地震が起こったとしても、慌てずに対応できるようになっているはずなので、これからは自分の知識を多くの人のために役立てていきたいです。大災害はいつどこで起こるか分かりません。普段から災害を甘く見ず、もしもの時に備えて防災の知識を蓄えておくことが大切だと呼びかけていきたいですね。

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「家族みんなで防災を考えるきっかけを作りたい」と生徒の皆さん


〈絵本の問い合わせ先〉
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