えーる
えーる
2018年2月発行のえーるVol,6に「いざという時の、生きる知恵。楽しみながら学ぶ『防災』」のテーマで掲載。女性防災リーダー養成講座をきっかけに、せんだい女性防災リーダーネットワーク、若林区荒町連合町内会SBL、防災士会みやぎと、次々とその活動の輪を広げ、仲間とともに「災害時に生き抜く知恵」を伝えている彼女の、活動の原点と未来への「想い」をお聞きしました。

楽しみながら学ぶ、「災害時に生き抜く知恵」。楽しみながら学ぶ、「災害時に生き抜く知恵」。

「『えーる』に取り上げてもらったことを懐かしく思い出しますね。楽しみながら防災をしていくという記事に反響もありました」と語る若生さん。

若林区荒町連合町内会SBL、防災士会みやぎ副理事長として活動。2017年11月、「世界防災フォーラム」と同時開催された「防災推進国民大会2017」の仙台市主催企画「せんだい防災パビリオン」で、各地区のSBLとともに「カラフル防災ランタンと防災スイーツを作ろう!」の企画・運営を行った。

「ペットボトルと100円グッズのLEDライトを使った『カラフル防災ランタン』づくり、災害用クラッカーにチョコやジャムで絵を描く『防災スイーツ』づくりは、お子さんはもちろん、大人の方たちにも大好評で、延べ千人以上の方に参加いただきました」。

防災・減災を体系的に学ぶ中で得た知識は、一般の方には難しいことも多い。しかし、身近なモノを使って防災に役立てる体験は、小さなお子さんにもわかりやすく、記憶にも残りやすい。防災グッズづくりを通して防災・減災について学んでもらい、「災害時に自分の身を守り、生き抜くための知恵」として、いざという時にそれを思い出し、活用してもらいたい。その「想い」は震災から10年を経た今も少しも変わることなく、その活動のフィールドを広げ続けている。

えーるVol6を懐かしそうに見る若生さん
えーるVol6を懐かしそうに見る若生さん
Vol6掲載・「防災スイーツを作ろう!」での参加者の様子
Vol6掲載・「防災スイーツを作ろう!」での参加者の様子

いざという時、頼りになる大人に。いざという時、頼りになる大人に。

震災の1年ほど前に荒町に引っ越し、荒町小学校PTAに所属。大震災が起きたのは、4月から健全育成委員として活動を始める直前だった。震災後、子どもたちの通学路は道路の陥没や自転車通勤をする人の混雑で危険だったため、PTA役員としてその安全確認にあたった。

「小学生と中学生だった子どもたちの通学には様々な危険が伴い、不安を感じていました。でも、子どもたちの安全を守る知識もスキルも持っていない。いざという時に頼りになる大人じゃなかったんですね。それがきっかけになって、防災をしっかり学ぼうと思ったんです」

そんな時、「女性のための防災リーダー養成講座」を紹介されて受講。そこで、仙台市地域防災リーダー(以下、SBL)養成講座を勧められる。SBLとは、町内会長などを補佐しながら防災計画づくりや避難訓練の企画運営を行うほか、災害時には地域住民の避難誘導や救出・救護活動の指揮を行う、地域防災の担い手。2011年の震災後、仙台市が自主防災組織の活性化と市内全域での地域防災力の底上げを図るため、独自の講習プログラムを開始したもので、この取り組みは現在も続いている。これらの養成講座で出会った、子育てしながら同じような思いをかかえていた仲間とすぐに意気投合し、「せんだい女性防災リーダーネットワーク」を立ち上げる。

「SBLの養成講座を修了し、町内会の皆さんとスムーズな連携がとれるまでは少し時間がかかりましたが、ここで知り合った女性SBLの仲間と励まし合い、情報を交換し合い、それぞれが自分の住む地域で活動の場を広げてきた経緯があります。この時のメンバーは今も各地区のSBLとして活躍していて、お互いに相談したり、研修会や見学会を開催したりしています。こうしていつでも協力し合える仲間がいることは、本当にありがたいですね」

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    各地区で活躍している女性SBLの皆さん
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    救命救急講習の様子
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    山元町の震災遺構・中浜小学校での視察研修会
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    富沢社会学級の様子

つながり、学び、伝え続ける。つながり、学び、伝え続ける。

若林区荒町連合町内会SBLとして荒町小学校区避難所運営委員になり、仙台市消防局応急手当普及員、宮城県防災指導員、防災士の資格を取得したほか、「仙台防災枠組講座」にも参加。災害時対応のエキスパートとしての知識やスキルを習得する中で、ネットワークの輪も次々とつないできた。

台風等で大雨警戒情報が出た時は、避難所運営委員として荒町小学校に避難所を開設して泊まり込み。地域の「防災学習会」や、仙台市教育局生涯学習センター主催の「防災・減災講座」のほか、現在、副会長を務める仙台市社会学級研究会の社会学級では、各地域のハザードマップにカスタマイズした「防災講座」を企画・運営している。気象予報士と防災士がコラボして運営する「おてんき☆ぼうさいラボ」の「お天気と防災」教室にも参画するなど、その活動は多岐にわたる。

ペットボトルの蓋に小さな穴を開けただけのシャワーヘッドは、ボーイスカウトが山で虫に刺された時やケガをした時に使っていて、災害時には簡易シャワーになる。「これは防災士仲間に教えてもらったのですが、良いと思った物は自分たちで実際に作って試し、様々な場で出会った方に紹介しています」。頼れるSBLとして活動していくためには、常に勉強が必要。分野を問わず、新しい知識や情報を吸収して、スキルアップに努めているという。

若林区荒井にある「なないろの里」では、「ちょっとお茶っこサロン」を開催。震災で家や家族を失った方々を支える活動は、仙台市内だけにとどまらない。「あんなにたくさんの人が亡くなるような災害は、もう二度と起きてほしくないけれど、もし起きた時、少しでも多くの人が助かるように、災害に備え、自分の身を守る知識やスキルをしっかり学び、伝えていこう」。そんな「想い」を心から共有できる仲間にも出会った。

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    パネリストを務めた「仙台JC防災フェス」の会場
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    ペットボトルの蓋で作ったシャワーヘッド
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    大学生の皆さんと津波避難ビルを見学
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    「仙台防災枠組講座」テキスト

仲間とともに、未来へ向けて。仲間とともに、未来へ向けて。

震災から10年を経て感じているのは、「防災・減災」を最優先に考える「防災の主流化」の必要性だという。地震だけではなく、様々な自然災害が懸念される日本で生活をする以上、あらゆる物事において災害時の危険をあらかじめ想定することがますます重要になっているという。

「震災を知らない子どもたちにも、いろいろな切り口の遊びや体験を通して、いざという時にどうやって自分の身を守るか、さらに、どうしてそれが大切なのか、楽しみながら学んでもらいたいです。背景に震災があって、そこで何が起きたのか、大人がしっかりと伝えられるようにならないといけませんね。そしてまた、自分やまわりの人を災害から守る力を、子どもたちがいつの間にか自然に身につけていってくれたら嬉しいですね」。

「災害時に生き抜く知恵」を通して「防災・減災」をより多くの人に広め、理解してもらい、未来の子どもたちへ手渡す。その「想い」を様々な人と共有しながら進化させ、明日へとつなぐ活動はこれからも続いていく。

自身の活動について熱く想いを語る若生さん
自身の活動について熱く想いを語る若生さん