仙台市は「杜の都」の豊かな環境を活かしながら、防災力のあるまちをつくり、ひとをはぐくむをモットーに、世界へ誇れる安全・安心な「防災環境都市づくり」を進めている。取り組みを多くの人に知ってもらうため、昨年度より展開しているのが「杜(もり)の都は守(まもり)の都」キャンペーンだ。今年度のシリーズでは、防災環境都市を支える “ひと”にスポットを当て、日々の生活に生かせる活動も紹介する。
仙台市地域防災リーダー
「活動を続ける中で、地域の防災意識の高まりを実感しています」と話す仙台市地域防災リーダー(SBL)の室月都子さん
今回紹介するのは、青葉区八幡地区を中心に防災・減災活動に力を注いでいる仙台市地域防災リーダー(SBL)の室月都子さん。
室月さんが防災活動に関心を持ったきっかけは東日本大震災での経験だ。当時、地区の民生委員児童委員の主任児童委員をしていた室月さんは、幼いお子さんがいるお母さん方から震災で直面した不安や困りごとを聞く機会があった。「当時の私は防災の知識が薄く、ただ聞いたり共感したりしかできなくて。自分の無力さにとても歯がゆい思いをしたんです」。
その後NPO法人イコールネット仙台による「女性のための防災リーダー養成講習」を受講。さらに地域に特化した防災を学びたいとの思いから、2013年にSBLの養成講習を受講し認定を受けた。「SBLになってよかったのは地域との連携が強まったこと。町内会長さんと顔なじみになったり、避難所運営の要でもある地区内の小中学校ともつながったりして、地域での防災活動がスムーズになりました」。
室月さんが避難所運営委員を務める中学校では年1回、生徒も参加しての避難訓練を行っており、活動を通じて生徒たちとも顔見知りになった。「もしも大きな地震が起きて学校が避難所になった時、中学生が私の顔と名前を知っていれば、『室月さん、何か自分たちにできることある?』と声がけしやすくなる。それが理想形かなと思っています」。
▲今年の防災教室ではペットボトルなど身近な材料でランタンづくりを行った
▲講座では、在宅避難の際の緊急簡易トイレの作り方なども伝える
「せんだい女性防災リーダーネットワーク青葉」の活動では、仲間とともに15年から八幡児童館で小学校1~3年生対象の防災教室を年1回開催。東北福祉大の救命ボランティアサークルやガールスカウト、仙台市減災推進課、地域の団体などと連携・協力し、防災クイズやロープ結び、防災グッズづくりなど、暮らしに身近な防災・減災を子どもたちに教えている。
▲今年の防災教室ではペットボトルなど身近な材料でランタンづくりを行った
「今年の教室ではペットボトルとルミカライトでランタンづくりを行いました。地域のさまざまな団体と顔の見える関係を築くことで、災害時のコミュニケーションがとりやすく、日ごろの情報交換もできる」と室月さん。今教室に参加するのは震災後に生まれた世代。「当時の大変さを伝えること、身近にあるものを使って防災に役立つものが作れると教えることは、どちらも大切」と話す。
「最初に受講した児童たちはもう中学生になっています。中学校で避難訓練をした際、『将来自分は、地域の力になりたい』と話してくれた子がいました。地域の子どものたちの心に、何かしら防災意識が根付いていることを感じて心強い思いがしました」。継続してきた活動への手ごたえを感じた出来事だったと室月さんは話した。
震災から11年。その間に防災・減災の捉え方は大きく変化してきている。以前は「震災が起きたらすぐ避難所へ」が合言葉だったが、現在は新型コロナウイルスなどの感染症対策で密を避ける意味も含め、避難所以外の場所(自宅、親戚や知人宅)への「分散避難」「在宅避難」の検討が呼び掛けられるようになっている。
▲講座では、在宅避難の際の緊急簡易トイレの作り方なども伝える
「自宅が安全ということが大前提ですが、在宅避難は避難所にありがちなストレスが無く、プライバシーも守られ、安心できる避難方法です」。そして、備えの中でももっと広まってほしいのがトイレに関すること、と室月さんは訴える。「水や食料は備蓄していても、排泄の備えの話はなかなか表に出てこない。特に女性は話しづらいと思います。講座でよくお教えするのが、ビニール袋にペットシーツを入れて使う緊急簡易トイレの作り方です。万が一の時の抵抗を無くすためにも、平時に1回試してみることをお薦めします」。
こうした知識をはじめ、防災の知識は年々バージョンアップしている。室月さんもSBLとして新しい情報を取り入れながら、地域に根差した顔の見える防災活動を続けていきたいと話した。
家庭で備えよう・考えよう
・防災教室で学んだことを家族と話し合おう
・避難所以外の、自宅や親戚、知人宅などへの「分散避難」「在宅避難」の検討
・平時の緊急簡易トイレ体験
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